[[ソーシャル・メディア衛星開発プロジェクト SOMESAT]]

*はじめに [#y31371cf]
人工衛星に限らず、人間の手のとどかない場所にある機器を制御し、結果を得るために「通信」はとても大切です。人工衛星・探査機では電波を使った「無線通信」になります。~
超小型衛星であるSOMESATでは大きく分けて3つの通信が必要となります。~
まず、第一に「衛星がここにあって、今の状態はこうですよ」と発信するのが「ビーコン」で、電波のON/OFFのみのモールス符号で信号を衛星から送ります。~
第2が地上から衛星への「アップリンク」で、衛星に何をさせるかの指令が主な役割となります。~
第3が衛星から地上への「ダウンリンク」で、衛星の詳細な情報、写真、動画などを地上へ送るためのものです。~
これらを実現するためには多くの技術、機器がなければなりません。上から衛星用送受信機、衛星アンテナ、地上アンテナ、地上受信機です。衛星との距離は近くて200キロメートル程度、遠ければ2000キロメートル程度あり、その距離で通信ができなければなりません。地上の無線局ならば大型化できますが、衛星は大きさも使える電力も限られているのでいろいろな制約があります。~
電波の使用は国際的な取り決めや法律にそって行わなければならないので十分なチェックも必要になります。~
まだまだ実験段階ですが成果などの紹介をさせていただきます。~

**基礎実験 高周波信号の発生(発振) [#j045e503]
無線技術はまず「安定な信号を作り出す」ことからはじまります。~
普通のデジタル実験や低周波の回路ならブレッドボードなどの「仮組み」で実験ができますが、高周波回路では「光速」の限界が近づいてくるため、実験であっても「小さく作る(長い配線厳禁!)」「グラウンドを明確にする」「インピーダンスをあわせる」などのきまりを守らなければなりません。わずか数センチの配線でもコイルやコンデンサのような性質があるためです。~
これらの基板は薄いユニバーサル基板の「部品面」に銅箔テープを貼ってグラウンドとし「はんだ面」にチップ部品を乗せて組み立てています。ただし、QFP、QFNといったパッケージのICはユニバーサル基板ではほぼ不可能、変換基板は「長い配線」となって使えないため感光基板で作る必要があります。~
実験は基本的に「左手にピンセット、右手にはんだごて、額にルーペ」で部品をはずして別のものと交換、そして測定」の繰り返しです。~

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超高速オシロスコープが来たときの実験。基板が2.54ミリピッチなのでコイルもかなり小さい。~
とはいえ、安定度がなかなか出ない。~

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コイルを頑丈にするためにU字型に曲げただけのものにしてみた。・・・Qが低くて安定せず。~

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メーカー製に習おうってわけでTVチューナ(ジャンク)を改造してSGにしてみた。
中に入っていたPLLの資料があったのでPICでコントロール。かなり安定。~
とはいえ・・・出力を外部に取り出すのに一苦労。~
このころからちょっとまともなオシロスコープ(200MHz4現象)が常備されることになった。~


**無線というよりワイヤレスマイク級で実験 [#q707b7e2]
某TV番組にも出た「10センチ級モックアップ」の中身のうち1枚。基本はワイヤレスマイク回路+FMラジオIC。~
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10センチ角モックアップに入れて実験してみたワイヤレスマイク級の送受信基板。
まだまだ実用の域には遠い。~


**信号発生器とその仲間 [#e6a2a5f5]
高周波回路の実験にとって標準信号の発生は大きな課題。仮の本業の関係でとても優秀な測定器を借りることはできるけれど期限がきまっているのが難点。測定器の値段は分譲の団地ぐらいの金額が普通なのでそうそう買えない・・・~
というわけで高価な測定器があるときに校正する形で自作や実験を繰り返し。~

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クロックジェネレータICでSGに使えるかな?ってのがあったので実験。どうやらECLなので製造中止・・・電気は食うし、なにより水晶振動子の指定が「直列共振型」って・・・そんなの手に入らん。普通の並列共振では安定した発振ができず、外部から信号を与えてもイマイチでした。~


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アナログデバイセス社のDDS、AD9834を使ったSG兼周波数ドメインアナライザ。正弦波出力20Hzから15MHzまで1Hzステップ、アジレントのカウンタで校正してみてもだいたいあってた。~
ON/OFFキーイング、FSK変調可能、周波数をスイープしてフィルタの減衰特性や位相特性を見ることも可能。実は3代目。~
ON/OFFキーイング、FSK変調可能、周波数をスイープしてフィルタの減衰特性や位相特性を見ることも可能。正確ではないけれど低周波でのネットワークアナライザもどきとしても使用できます。実は3代目。~

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やっぱり広範囲なSGが欲しくなって実験・・・したもののVFOの1つでどういうわけか「安定度が高く、周波数可変範囲が広く、出力特性も平坦」というチャンピオンデータが出てしまったので解析していたのだが・・・原因不明。それでは製品として使えないので途中で断念。~


**受信機関連の実験 [#k6ee0ecd]
衛星用の受信機は「衛星側」と「地上側」でおおきく違うのは環境。衛星側では真空の中、高温、低温、そして打ち上げ時の振動、過大入力で壊れないことなどが必須条件。地上側は高感度(低雑音)であることが強く要求されます。~
IC1個の試験を行うにしても「こんな信号入れたら動いた、それでOK」とはなりません。ある程度「製品」として評価できるところまで、何台つくっても同じ性能が保証できるまで詰めておく必要があります。~
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受信用ICとして従来はNXP社のSA605を使っていたのだが、3V動作ができないためいろいろ探していたら新日本無線のNJM2552というICを発見して実験。電源電圧が2.7Vまで安定して動作するという利点は大きい。FMだけでなくAMも受信できるため、BFOを用意すればSSBやCWも受信できるぞ、というわけで50MHz帯の受信機にしてみたもの。VFOはディスクリート、「だいたい安定した」ものを作れるようになってきた。PLLはアナログデバイセスADF4001、コントローラはPIC18。~
だいたい100MHz以下なら普通のユニバーサル基板でそこそこ安定したものを作れます。~
これをベースにすれば435MHz帯をはじめとするUHF帯の受信もできるので親受信機として使用。~
拡大したのは「こんな配線もしてるんだよー」という例。~
拡大したのは「こんな配線もしてるんだよー」という例。最近のICは小さいので配線が大変。~


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435MHzから437MHzのアマチュア衛星を受信するためのコンバータ実験。ローカルオシレータはディスクリート、PLLは富士通のMB15E03L。ループフィルタに注意すれば安定して使える。~
・・・感度を上げるためにHEMTアンプつけなきゃダメかな?~

**最近の実験 [#a9e24911]

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はんだづけ失敗。このICは400MHzのDDSで、120MHzぐらいまでの正弦波を出せるというすばらしいICなのだが・・・ICの底面にもはんだづけパッドがあり、ICの下で短絡。~
はんだづけ失敗の例。このICは400MHzのDDSで、120MHzぐらいまでの正弦波を出せるというすばらしいICなのだが・・・ICの底面にもはんだづけパッドがあり、ICの下で短絡。~
普通のQFPならはずして見せるのだが・・・取り外し不可能となって没。~


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ほぼ究極のVFO内臓PLL、アナログデバイセス社ADF4350の実験(まだ途中)。~
何がとんでもないって136MHzから4400MHzまで1つのICで出せるという「バケモノ」。~
ただしはんだづけは困難を極めた。まず、下面にパッドがあるがリードはない。ピッチが0,5mmなのではんだごては普通じゃ入らない。底面にパッドがあってこれは「必ず接地すること」となっている。~
仕事の合間と夜に3日かかってはんだづけした。一部パターンがはがれたため、補修している。錫メッキ線に見えるのはKV電線(より線)の中身をほぐしたもの。~


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UHF用ダイオードを使った検波型パワーメータ。パワーといってもmWレベル。
これがえらい失敗の元になった。単に検波してるだけだから周波数が高くなれば効率が落ちて出力が低下するはずと思い込んでいたら大間違い。500MHzと3GHzでは3GHzのほうが大きな値が出てくるという事態に。トラッキングジェネレータ付のスペアナで精密に測定したら「そういうもの」だと判明。とりあえず測定器は正確なのが必須だと思い知った。~


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無線、とくにデジタル無線通信では伝達試験には「ビットエラー」がやたら重要。アナログの周波数応答や位相特性だけではわからない事象があるため、擬似乱数信号を作ってエラーレートを調べなければならない。そのための信号発生器。後にケースに入れてエラーレートカウントの機能も搭載予定。~


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アンテナや高周波回路の接続においては50Ω終端というのが標準。そのエネルギー伝達を測定するためのツールがリターンロスブリッジ。とりあえず試作してみたけど、アイソレーション取るのにノウハウがたくさんあるのでこれまた継続試験。~